現在を生きる人たちが命尽きる日まで、人類の進化はどこまで進むのでしょうか。
あと10年ほどで宇宙エレベーターが完成し、誰でも宇宙にいけるようになるのでしょうか。
なかなか、難しいかも知れません。
映画『2001年宇宙の旅』で描かれた月面生活は、2014年の現在もかなっていません。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で描かれた2015年の世界へも、近づけていません。
科学の力は、人類を世界中のあらゆる場所に運びました。
不可能だった移動手段を生み出し、現在では“宇宙の入り口”まで到達することができました。
しかし、地球から離れた惑星への宇宙旅行には、まだまだ時間がかかりそうです。
現在の科学では人類を運べない場所がありますが、
現代アートの場合、視覚体験を通して、あらゆる場所へ人類を連れていくことができます。
科学が“現実世界を変える力”だとすれば、アートは“人を変える力”です。
現代アートは、“人の意識を変える”ことで、あらゆる場所への移動を可能にします。
オラファー・エリアソンさんの作品:『The weather project』
この作品は、テートモダン美術館のターバインホールで展開されたインスタレーションです。
広く四角いホール、その突き当たりの壁の最上部に、丸く大きくオレンジ色に光る照明が
設置されています。
“丸く”オレンジ色に光る照明は、実は“半円”で、天井全体が鏡面になっているため、“丸く”見えるのです。
その丸いオレンジ色の光は、人工的なハッキリとした円ではなく、輪郭はにじんでいます。
輪郭がにじむのは、ホール全体を水蒸気で覆っているからです。
輪郭を奪われ、水蒸気の粒子とともに空間に拡散するオレンジの光。
それは、煌々と光る太陽のようです。
太陽のようなオレンジの光は、ホールの壁一辺分ほどある、巨大な光です。
人類がその大きさで実際に太陽を見ることは、“宇宙に出て近づく”以外、不可能です。
そして、天井全体が鏡面となり、“天井を失った”ことで、その空間は無限性を獲得しています。
その無限性は「宇宙空間」のようです。
宇宙空間で巨大な太陽を見る、という体験。
この作品は、人類を “太陽のそばまで運ぶ” のです。