セザンヌのコンセプト

 

昨日のエントリーに引き続き、「コンセプト」について取り扱います。
今日は、コンセプトの具体事例についてです。

タイトルをご覧になり、
「コンセプトが重要っていうけど、セザンヌは現代アートじゃないし」
と思われたかも知れませんが、近代の作品にもコンセプトのお手本となる作品があるんです。

そしてセザンヌのコンセプトは、アートの歴史を変えてしまうほどだったのです。

フランスの美術界で晩年近くまで、なかなか評価されなかったセザンヌ。
目立たない地方に移り、もくもくと独自の手法を確立しながら制作を続けました。

その中で確立された手法の一つが、アートの歴史を変えるコンセプトになりました。

それは、セザンヌの静物画シリーズで表現された、“多視点” です。

この静物画シリーズは、りんごや皿や布、水差しや花瓶などが描かれています。

一つの絵の中で、真上に近い場所から見たモチーフと斜め上から見たモチーフ、絵によっては真横から見たモチーフが一緒に描かれています。

“多視点” とは、一つの作品内に多数の位置から見たモチーフが入っていることなのです。

つまりセザンヌの静物画を見た鑑賞者は、絵の部分から部分に視点を移すだけで、動かずして自分の位置の移動を経験するのです。

この経験こそが、セザンヌのコンセプトです。

それまでの絵画は、見たままの現実に近づける写実表現はありましたが、“絵画でないとできない表現” はありませんでした。
セザンヌが活躍する少し前の印象派においても、当時センセーショナルだったはいえ、“光の写実”でした。

多視点の混在という、現実の世界ではあり得ない、“絵画でないとできない表現” をセザンヌは表現してみせたのです。

そしてこのコンセプトは、様々な“絵画でないとできない表現” をアーティストが実践していく、きっかけとなったのです。

 

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