現代アートは、とっつきにくい側面があります。
なぜなら、当ブログでもしばしば触れるように、現代アートは “なんだコレは!?” という反応になるのが大前提だからです。
すなわち、はじめて現代アートとは何かと興味を持った人は、“なんだコレは!?” という反応をくぐる必要があるわけです。
そこで「よくわからないなぁ、現代アートって」となり、興味を失ってしまう人もいるわけです。
そうした人たちは、もともとアートが嫌いではないため、“何が良いかわかりやすい印象派” などに落ち着いていくわけです。
しかし、せっかく現代に生きるのなら、進行形である現代アートに興味を持ってもらいたい、と私は考えています。
そこで。
多くの人が、現代アートに興味を「継続」してもらうためには、“最初” が肝心です。
つまり、現代アートの“入り口” といて見るアーティストが「誰」なのかが重要なのです。
その “入り口” となるアーティスト。
ズバリ、『サルバドール・ダリ』です。
なぜ、サルバドール・ダリか。
理由は、ひとえに “とっつきやすい” からです。
“とっつきやすい” 理由は、以下の三点です。
・人類に共通する、身の回りのものがモチーフ
・身の回りのモチーフが、非常に美しく “写実的” に描かれている
・身の回りのモチーフが、疑問を感じる形で設定されている
つまり、身の回りの慣れしたんだモノがモチーフである。
しかも、それらの描写は写実のレベルが最上位で何を描いているかすぐにわかる。
それらは、謎を残すような組み合わせやシチュエーションで設定されているのです。
謎を残すようにモチーフを組み合わせることを、『デペイズマン』といいます。
シュールレアリズムという流派の中で編み出された技法です。
この『デペイズマン』が施された作品は、鑑賞者に “なんだコレは!?” と感じさせます。
これまで見たことがない組み合わせは、鑑賞者に “思考のきっかけ” 与えるのです。
つまり、『デペイズマン』という技法を用いたサルバドール・ダリの作品は、まさに現代アートが目標とする “思考のきっかけ” を体現しており、現代アートのお手本ともいえるのです。
しかも。
サルバドール・ダリの描写は見るものを唸らせる卓越さがあります。
構図やモチーフの変形も、大胆かつユーモラスで、鑑賞者の好奇心を触発します。
コントラストや塗り方など、“絵画そのものの要素” も素晴らしいのです。
ゆえに、現代アート初心者にとってサルバドール・ダリの作品は、「わかりやすさ」と「謎かけ」が同居しているため、鑑賞を楽しみながら、アートの “仕掛け” を考えられます。
まさにサルバドール・ダリは、現代アート初心者にとっての入門となるアーティストなのです。