鴻池朋子さんは、マンガを思わせるデフォルメされたモチーフの形態と、日本画素材をメインにでモノクロやカラーの作品を描き分けるのが特徴的なアーティストです。
オオカミ、ナイフ、森、などをメインのモチーフにしています。
まず「オオカミ」や「ナイフ」と聞いて、平和な絵画は想像しにくいと思います。
現に、鴻池朋子さんの作品は、大量のナイフや大量のオオカミが “襲いかかっているような” イメージが描かれています。
“襲いかかっている” ではなく、“襲いかかっているような” と書いたのは、“襲いかかっている” と断定できる描写がないからです。
あくまで、鴻池朋子さんの作品は、“襲いかかっている” という結論を出していないのです。
大量のナイフが舞い、大量のオオカミが少女を取り囲む…。
そうしたシーンに、鑑賞者は「これから何か重大なことが起きる」という気持ちをもつことになります。
そして、絵画の前で、「最悪の結果」や「奇蹟的な想像できない結果」を想像し続けるのです。
作品を見終わった鑑賞者に残るのは、“恐怖の予感” と “結末の想像” です。
鴻池朋子さんの作品は、よく「物語をテーマにした作品」と紹介されています。
しかし、鑑賞者にシーンの結論を考えさせ続けるという本意味で、“鑑賞者に物語を与える作品” を描いているのです。