白髪一雄は、足で油彩画を描く作家です。
1924年生まれで、戦後間もない1950年代から活躍した作家です。
支持体を床に敷き、天井に引っ掛けたロープでバランスを取りながら裸足で描くスタイルです。
本人が、「絵画には勢いがないといけない」という趣旨のコメントをしており、“細部へのこだわり” や “写実” は眼中になかったことがわかります。
この描き方は、必然的に “行為” を強調するもので、“行為” がコンセプトであるとも言えます。
今なら、“行為” をコンセプトにしたものはそこまで珍しくないですが、写実の全盛だった当時の日本でやってのけたのは、強靭な意志の強さを感じさせます。
足で描くスタイルを散々父親にどやされても、辞めずに続けたのも大したものです。
時代的にいえば、写実全盛の1950年代から “行為” というコンセプトを提示し続けたのは、スゴい先進性です。
“もの派” だってまだ出てない時代です。
アメリカでアクションペインティングが出てきたのが1950年代なので、ほぼ同時期か、若干早く “行為” を軸にした描き方をはじめていたことになります。
何より一番スゴいのは、白髪一雄を認め、支援した人々です。
当時では(現代でも足で油彩画描くアーティストはいません)超異質なアーティストの彼を、認め、発表の場を与え、支えた人たちがいたのです。
つまり、1950年代の日本にも、“超異質な才能” を受け入れる土壌があったことを証明しています。
そんな土壌を持っている日本だからこそ、現代の日本人アーティストは、超異質な作品に挑戦していくべきなのでしょう。