木炭デッサンは、絵画の歴史の中でも太古の昔からあったといえます。
人類が火を持ち、“墨” を使って絵を描いたのが、木炭デッサンのはじまりだとしたら、かなり昔から存在した可能性があります。
木炭という素材を使用した作品で有名なのは、日本の画家ですと、安井曾太郎の裸婦画ですね。
リアルで卓越した描写は見応えがあります。
そして、何より木炭デッサンは、「受験」で必須実技とされてきました。
その木炭デッサンが、有用かどうかはともかく、これまで受験で利用され続けてきた理由は一考に値します。
しかし、木炭デッサンは古い、と考える人もいるでしょう。
古いからやる必要はない、と考える人もいるでしょう。
でも、そんなこといったら、油彩画もかなり古いことになりますし、その油彩画をベースにしたアクリル画も古いことになってしまいますよね。
特徴の話です。
木炭デッサンの最大の特徴は、以下の2点です。
1)短時間描き、長時間描き、どちらにも向いている
2)光の自然なグラデーションをしっかり表現できる
の、2点です。
まず、1)です。
木炭という素材は、少ないタッチで大量の粒子を画面に乗せることができます。
ということは、短時間でモチーフの全体像を描くことができるわけです。
また、丁寧な処理をすれば、小さな面積でも描けるため、かなり細部まで描くことができます。
他の画材はどうでしょうか。
コンテは素材として硬いため、短時間で全体像を描くなら線での表現となります。
鉛筆も同様です。
短時間であれば、輪郭線を抽出していく表現になります。
木炭のように、短時間で全体像をとらえる素材はそうそうないのです。
しかも、細部までかけてしまうため、時間設定に融通がきくのです。
だからこそ、長く受験に利用されてきたのです。
次に2)です。
一つのモチーフには、必ず「明暗」が生じます。
モチーフをリアルに描くには、光による自然な明暗のグラデーションが再現できるかが重要になります。
ここでも、木炭の細かで画面に乗せやすい粒子は、明暗のグラデーションをしっかり表現できます。
木炭の側面をなるべく多く画面にあて、丁寧にタッチを重ねていけば、自然な明暗に近いグラデーションが表現できるのです。
木炭デッサンが古い、古くないか。
木炭デッサンをすべきかすべきでないか。
そんな議論はどうでも良いのです。
時間設定の融通がきく上に、全体表現や細部描写も訓練できる。
何度も完成させることで精度が上がっていくデッサンで、これほど時間が短縮できる素材は、現状ほとんどないのです。
では、何かあれば教えてね!