絵画空間の常識を、変えるアーティスト


前回のエントリーは、絵画空間の “抜け” をつくるために注意しなくてはいけないことを描きました。

モチーフや対象の要素が、画面の “四角” の要素と近い場合、絵画空間の “抜け” がなくなってしまうという話です。

一方で、画面の “四角” と近い要素を、あえてモチーフや対象に設定すると、“抜け” のない絵画空間をつくることができます。

そうした試みで作品を手がけているアーティストが、影山晋平さんです。

影山晋平さんの絵画作品は、絵画空間の “抜け” を、画面の四角に近い要素をモチーフに使用して、コントロールしています。

具体的には、奥行きの約束された、空と山などからなる風景画に、画面の四角と並行関係になるベタ塗りの平面を組み合わせています。

奥行きある風景と、ベタ塗りによる平面を絵画空間の中に設定する。

そのことで、当たり前に奥へ進むはずだった視線は、手前で止まります。
しかし一方で、視線は風景画を見ようと奥へ進もうとします。

影山晋平さんの絵画は、“2つの視線” を存在させてしまう作品なのです。

これまでの絵画で、当たり前に設定されてきた “スムーズな奥行き” を止め、“絵画空間” の在り方に疑問を呈する作品なのです。




Comments are closed.