広告と現代アートは違う、ということは何となくわかりますが
どこが違うのかを考えると、なかなか違いがはっきりしないものです。
まず存在意義の違いです。
「商品やサービス、ブランド」を人に伝えるのが広告で、
「テーマ・コンセプト」を人に伝えるのが芸術です。
でもこれって、 “伝えるもの”以外は似ています。
そもそも、広告は商品やサービスを伝えるための「テーマ・コンセプト」
を持ちますから、“伝えるもの”も似ています。
では広告と芸術、それぞれを目指す人はどんな勉強をして、その世界に入るのでしょうか。
広告を制作するアートディレクター、グラフィックデザイナー、写真家など、
芸術学部のデザインや写真、などの科が主な出身学部です。
一方、現代アートを制作するアーティストも芸術学部が主で、油絵、日本画、彫刻、デザイン、工芸、写真など、さまざまな科の出身者がいます。
出身学部も似ています。
しかし広告と現代アートには、表現の幅に差がありますので、
その幅の差が、出身の科のバリエーションに表れていますね。
広告はポスターなどの印刷物、CMなどの映像、WEBなどある程度アウトプットが
限定できます。
芸術は、どんなアウトプットでも作品にできます。何でもアリです。
どうやら、広告と現代アートには、アウトプットの幅に違いがありますね。
しかし、「何らかのメディアを用いて表現する」という部分は共通しています。
もっと本質的な違いはないでしょうか。
広告物には“キャッチコピー”がありますね。つまり「言葉」で商品やサービスを伝えるわけです。
写真や映像、デザインに言葉が加わることで、伝えるべきことが、明確になります。
しかし、現代アートにもテーマ・コンセプトを伝えるべき「言葉」が入る作品があります。
やはり、表現方法が共通しているように見えます。
しかし、実はここが、大きな違いではないでしょうか。
広告には、キャッチコピーを入れてでも、“確実に”商品やサービスの本質、
ブランドを高める情報を伝えたいターゲットに伝え、“納得”させなくてはなりません。
購買意欲やブランディングに結びつかなければ、必要とされなくなってしまいます。
一方芸術は、言葉を入れて表現しても、“確実に”テーマ・コンセプトを鑑賞者に伝える必要はありません。
気づいてくれる人が気づいてくれれば良いのです。
すなわち、誰かが“発見”してくれれば良いのです。
広告と芸術の決定的な違い。まとめると、
・広告の目的は「見た人を納得させる」
・芸術の目的は「見た人に発見させる」
です。
“納得させる”ということは、伝えるべきことを確実に伝えなければなりません。
一方、“発見させる” ということは、伝えるべきことが確実に伝わるとは限らない、
ということです。
自由度が全く違いますよね。
どちらが優れているか、という話ではありません。
目的が違うということは、世の中にもたらされる“効果”も違うといことです。
多様な効果が、世の中を豊かにしていくのです。