制作中の「偶然効果」をどこまで取り入れるか

 

制作をしていると必ず、「偶然」の要素にたくさん出会うことになります。

制作途中で、タッチのかすれ具合、絵具のにじみ、さまざまな要素で意図しない「偶然」が起こります。
その「偶然効果」により、作品が劇的によく見えることがあります。

この素敵な「偶然効果」を生かしたいところですが、ひとつの問題が生じます。

「偶然効果」により作品を仕上げていくと、“当初意図した完成のイメージ” から離れてしまう。ということです。

非常に悩ましい問題です。
この問題へは、二つの場合でとるべき行動が変わります。

まず、目の前の1枚を最高の作品にしたい場合。

「偶然効果」により劇的によくなった作品が、それまでに描いた作品の中で1番よくなる見込みがあれば、そのまま「偶然効果」を生かして描き進めるべきです。

次に、目の前の1枚より、先々に最高の作品を描きたい場合。

「偶然効果」でよくなった部分は、写真やメモで記録として残しましょう。
記録を残したら、当初予定していた表現で制作を進めましょう。

なぜ「偶然効果」を残さないか。
完成のイメージと課題をもって制作をしている場合、「偶然効果」で振り回されると自身の表現を育てるさまたげになる可能性が生じるからです。

同様に、完成のイメージと課題をもって制作中に、当初予定していなかった“実験要素” を突然しかけるのも問題です。
“実験要素” をしかける場合は、あらかじめ実験要素を入れることを決めておき、自身の作風にどういう影響が起こるかを見定めましょう。

作品に気分が少々影響することはあるかも知れません。
しかし、じっくりと自身の表現を育てていくのであれば、突発的な表現への「衝動」は抑えてください。
それまで培った自身の小さなこだわりを、次の1枚でも辛抱強く育てることが、作品の飛躍につながるのです。

作品の質を先々まで、末永く向上させるには、「偶然効果」とうまく付き合っていく必要があるのです。

 

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