絵画に携わっていると、よく疑問に思うことがあります。
それは、イラストと絵画は何か違いがあるのか。という疑問です。
シンプルなタッチがイラストには多く、複雑なタッチが絵画には多いように思えるため、
「描き込み」の差がイラストと絵画の違いでしょうか。
しかし、複雑なタッチのイラストもあれば、シンプルなタッチの絵画もあります。
では何か違いがあるのでしょうか。
イラストと絵画の違いは、それぞれの目的を検討すると浮かび上がります。
イラストの目的は、
広告のコピーや書籍の文章など、何らかの伝達を、わかりやすくすることです。
一方、絵画の目的は、
絵画そのものによって、何らかの伝達をすることです。
つまり、
“伝達をわかりやすくする” のがイラストで、
“伝達そのもの” が絵画、ということになるわけです。
そのため、イラストと絵画の境界が曖昧になることがあります。
伝達をわかりやすくしたイラストが、伝達そのもの、になることがあるからです。
たとえば、雑誌で「田舎暮らし」の特集ページがあり、田舎暮らしについて取材された文章が書かれています。
そこに、読者が内容をわかりやすくするため、田園風景のイラストを入れます。
通常、その田園風景のイラストは、取材された文章をわかりやすくした段階で完了です。
しかし、この田園風景のイラストだけを切り離し、展示し、鑑賞者が感じいるものがあれば、絵画になるのです。
つまり、人々に何かを訴えるような作品になるイラストがあり、
それは、“伝達をわかりやすくする” というイラストの機能を超えて、“伝達そのもの” になるのです。
また、“キャラ”が描かれた場合も、イラストと絵画を行き来することになります。
何かの機能になるために描かれたキャラが、“伝達そのもの” の絵画となることがあります。
また、一つの絵画で意味を持つように描かれたキャラが、広告などのコピーの伝達をわかりやすくことがあります。
結局、イラストと絵画の境界がはっきりするのは、“伝達をわかりやすくする” 使用をされたかどうかだけなのです。