キャンバス側面まで、絵を描くべきか

 

前回のエントリーでは、キャンバスが額縁を喪った理由を書きました。
今回は、額縁を喪ったキャンバスに起こる具体的なことです。

描かれた作品を額縁に入れない。

すると、キャンバスの裏側以外は、キャンバスは丸々 “外に出る” ことになります。
額縁の外に出たキャンバスの特徴は、 キャンバスの “側面” がオープンになることです。

そうして起こる疑問が、“キャンバスの側面を描べきかどうか” です。

キャンバスの側面は、背面の壁と絵画の画面の接続部分です。
つまり、背面の壁との兼ね合いに注意しなくてはいけません。

たいていの場合、背面の壁は、展示空間全体に広がります。
キャンバスの側面は、展示空間全体にも注意しなくてはいけない。ということです。


そのため、キャンバスの側面を “どうするか” は展示場所に委ねられます。

展示場がすべて白い壁であれば、絵が描かれたキャンバスの周りは白い壁、ということになります。
この場合、キャンバスの側面が白いまま残っていても、その側面と接する壁も白いため、“白同士がつながるため” 自然です。

しかしこの場合、キャンバスが壁からはみ出すような、“立体の主張” はなくなってしまいます。
キャンバス表面は描かれているため「画面」となりますが、キャンバス側面は何も描かれていないと、「空白」になり、画面の平面性を強調するのです。

ただし、画面が明るいトーンで描かれていれば話は別です。
側面が白くても、画面と側面は調和し、“立体の主張” を持つことができます。


“側面” のことで、とくに気をつけなくてはならないシチュエーションがあります。

それは、絵画全体のトーンが暗い(濃い)色で、キャンバスの周りの壁も同じように暗い(濃い)色の場合です。
この場合、キャンバスの側面をしっかり描いておかないと、白地が不自然に目立ってしまいます。

キャンバス側面の描き方は、背面の壁、展示場の色彩や雰囲気、関係する全体への意識が必要なのです。


 




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