絵画と映画は、似ていますか?
この疑問に対しては、おそらく、人により意見が分かれるでしょう。
「全然違う」という人もいれば、「かなり近い」という人もいるでしょう。
しかし、時間の概念がある映画と、そうでない絵画は、やはり別物でなくてはいけません。
ただ、映画は映像であり、映像は “コマ送りの画像の集積” であることからも、絵画と映画は、遠い親戚くらいの関係が妥当です。
“コマ送りの集積” が絵画と映画の共通点であるなら、他にもいくつか挙げられそうです。
フレームという制限、色彩、テーマ、コンセプト…などです。
こうした共通点の中でも、特に強い関係を持つ要素があります。
それは、“シーン” です。
連綿と続く時間の中で、限定された一定時間を切り出す。
この要素においては、絵画も映画も共通しているのです。
映画の場合、“シーン” は “物語” に内包されています。
つまり映画において、“シーン” の重要度が “物語” を超えることは、極めて稀なのです。
映画における “シーン” の重要度が下がる理由には、映画が “シーン” の連続であり、“シーン” の量産化による“シーン” の希薄化が避けられないという事情もあるでしょう。
逆に、絵画では “物語” が “シーン” の重要度を超えることが稀です。
絵画は、常に “シーン” がメインとなるのです。
絵画は、どれだけの時間の物語を背景持つかわかりません。
その一瞬の “シーン” を切り出したという点で、必然的に “シーン” はメインとならざるをえないのです。
この、 “シーン” というものに特化した映像が、「ビデオアート」です。
映像が物語を内包し、その物語がメインであるなら、映像は「映画」や「ショートフィルム」になるわけです。
“シーン” だけに着目して、テーマやコンセプトを強調する映像は、絵画に極めて近い「ビデオアート」になるのです。
だからこそ、アートとしての映像作品を手がける人は、映画畑の人ではなく、アート畑の人が多いのです。