場所の持つ意味

 

建築は、場所とは切っても切れない関係を持っています。
場所を考慮しない建築はありえません。

では、絵画や彫刻などのアート作品はいかがでしょうか。
「場所は関係ない」でしょうか。

そんなことはありませんよね。
建築のような場所と切っても切れない作品とは違う、絵画や彫刻においても、場所の影響は大きいのです。

つまり、そうした個々の作品も、場所と一体になっている側面があるわけです。


たとえば『モナ・リザ』は、ルーブル美術館の展示場所とリンクしています。

当然ですが、また日本に『モナ・リザ』が展示されたとしても、ルーブル美術館での『モナ・リザ』とは “場所との関係性において” 別物ということです。

そして、常設されているルーブル美術館で見るのと、一時展示されている東京国立博物館で見るのとでは、“見た” 意味も異なります。


よく、「アートを身近に」というスローガンを目にします。

しかし、自分の身近なところにアートが存在した時点で、自分の場所にそのアート作品がリンクしてしまいます。

つまり、アートの醍醐味である、“人に何かを感じさせる” “人に何かを感じさせる” という要素が弱まってしまうのです。
簡単にいうと、“異端なはず” のアートが、“馴染み” のアートになってしまうのです。

そうならないために、たとえば海外から取り入れたアート作品は、そのアートの特質が “発揮され続ける” 特別な場所を用意しなくてはいけません。


アート作品への配慮なく、唐突に道端や飲食店に設置しても、その “場所の力” にアートが飲み込まれてしまいます。
“場所の力” に飲み込まれるということは、アート作品が持つ本来の効果が発揮されず、ただ「道端に “珍しいもの” があった」と面白がられて終わることを意味します。

アートの活用は、一見 “自由そう” なだけに、慎重に検討されるべきなのです。


 





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