油絵をはじめるとき。
油絵の具を中心に、筆やナイフ、パレットなど様々な道具が必要になります。
道具はもちろん、買わなくてはいけません。
買わなくてはいけない。
となったとき、画材屋さんにいくと、“高い油絵の具” から “安価な油絵の具” まで幅があることに気づくことになります。
そこで、絵画教室の先生から「買うべき油絵の具」を指定されているときは、迷わずに購入することができます。
しかし、油絵の具のメーカーや細かな色の指定がない場合、どこのメーカーの、どのくらいの値段のものを買うか迷うはずです。
そして、油絵の具をはじめて買う人の大半は、“安価な油絵の具” を揃えることになります。
“高い油絵の具” を購入して、“失敗すること” が怖いからです。
絵画教室や美術教育機関にもこの傾向があります。
なぜなら、初心者に対しては、極力経済的負担がないように、“安価な油絵の具” を薦める傾向があるのです。
初心者は、 “安価な油絵の具” を買う。
正解でしょうか?
初心者が “安価な油絵の具” を使うということは、安価な絵の具の色を知る、ということです。
そして、“安価な絵の具” でも、綺麗な色表現は可能です。
しかし、“安価な油絵の具” で綺麗な色表現ができてしまったら、“高い油絵の具” を使おうと思うでしょうか。
思いませんよね。“安価な油絵の具” でも綺麗な色表現で、綺麗な油絵が描けるからです。
こうして、初心者の頃から “安価な油絵の具” を使用する癖をつけてしまうと、“そのまま” 使用し続けるのです。
そして、“安価な油絵の具” を使用し続けるということは、“高い油絵の具” で表現できる “色の世界” を知らないままになるということです。
つまり、絵画表現の豊かさを知る機会が減ってしまうのです。
この問題は、「食」で考えるとわかりやすいでしょう。
子どもの頃から、ファストフードを中心に食べて育つのと、和洋中のあらゆる料理やあらゆる食材を食べて育つのとでは、味覚の豊かさのみならず、“人生の豊かさ” に圧倒的な差がでます。
油絵においても同じで、早いうちから “高い油絵の具” という “良い食材” に接しておくことが、絵画表現を豊かにします。
絵画表現が豊かになるということは、それだけ絵画鑑賞も楽しめる要素が増えるのです。
油絵などの絵画初心者は、お財布と相談しながら、“できるだけ良い画材” と付き合うようにしましょう。