“体験型アート” がもたらすもの

 

現代アートに対して、「よくわからない」と “抵抗感” を持たれる人は結構います。
その原因としては、やはり作品の “多様性” でしょう。

“多様性” によって、コンセプトの押し出しが強い作品については、作品を理解する素地が必要です。
そのため、作品を理解する素地がない人にとっていきなりコンセプトが強い作品を見ると、“現代アートは意味不明なもの” として意識されてしまいます。

しかしこの数年で、“意味不明なもの” として認識される現代アートを、変える流れが出てきています。

それが、“体験型アート” です。

厳密にいえば、体験型アートはここ数年ではなく、もっと以前から存在します。
しかし、近年は “体験型アート” の展示を見かける機会が増えています。


では、“体験型アート” が現代アートへの認識をどう変えているのでしょうか。

そもそも、“体験型アート” というものは、現代アートの “展示方法の一つ” です。

これまで主流だった「見るだけ」という行為だけでなく、展示作品に対して何らかの “アクション” を誘導するわけです。

「音を聴きながら見る」「狭い空間に入って見る」「横たわって見る」など様々です。
ワークショップと呼ばれる参加型のものも、体験型アートの一種といえます。

こうした体験型アートは、大きな効果があります。
それは、作品の中に鑑賞者を招き入れてしまうことです。

「見る」だけの作品とは違い、体験型アートは “体験”という「見る前の動作」を作品に用意していることになります。

「見る前の動作」が用意されると、鑑賞者は「見る準備」ができます。

体験を通じ「見る準備」ができてから、作品を鑑賞すれば、作品への “理解” や “愛着” も深まります。

つまり、ただ “解説文” を横壁に貼って「理解してね」とする通常の現代アート作品とは、“親切さ” においても大きな差があります。

体験型アートは、現代アートをあまり鑑賞したことのない人に対し、“抵抗感” を外す新しい潮流なのです。


 





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