忘れられない、ハイヒール

 

2006年、パリとロンドンに旅行に行きました。
主に美術館を巡る旅です。

パリでは主に、ルーブル美術館やオルセー美術館、ピカソ美術館、ポンピドゥー・センター。
ロンドンでは主に、大英博物館、ナショナルギャラリー、テート・ブリテン、テート・モダン。

目まぐるしく現れる傑作の数々に圧倒される、素敵な日々でした。

旅は終わり、普段の生活に戻るわけですが、見てきた作品たちの余韻はしばらく意識に
残り続けていました。

そして、きっかけがないと、作品たちを思い出さないレベルに、余韻は落ち着いていったのです。

しかし、何日、何週間、何か月経っても、意識に鮮烈に残る作品がありました。

レオナルド・ダ・ヴィンチの作品でも、ウィリアム・ターナーの作品でも、
フランシス・ベーコンの作品でもありません。

それは、パリの、ポンピドゥー・センターで見た作品です。

ピンクに近い赤色の壁に囲まれた展示室に、その作品はありました。

作品は、大人の背よりも高さがある、巨大なピンクレッドのハイヒールです。

目にした瞬間から、釘付けになりました。
それまでの展示室で見た作品は意識から消えていき、まがまがしくハイライトを放つピンクレッドの
ハイヒールに意識を支配されたのです。

その作品を見た後も、残りの展示室を見てまわったのですが、赤いハイヒールが頭から離れることは
ありませんでした。

なぜ、そこまでのインパクトがあるのか?

大きいからか、ピンクレッドだったからか、ハイヒールだったからか。
全てが要因とおもいますが、一つだけ断言できることがあります。

ハイヒールでなければ、これほどのショックを受けなかっただろう、ということです。

その作品には、
「資本主義社会はもはや、女性の活躍なしにはあり得ないでしょ」

というメッセージがはっきりと伝わる、コンセプチュアルアートでした。

社会と性別の表現は多くありますが、ここまで強く、ストレートに表現された作品は
見たことがありませんでした。

まさに現代美術が持つ力、を理解したのです。

そして何年も経った今でも、パリを思い出すと、セットでピンクレッドのハイヒールを思い出します。

手がけたアーティストは、パリ生まれ、ポルトガル人の
ホアナ・ヴァスコンセロスさん。

今のところ、NAVERで作品が見れます。
http://matome.naver.jp/odai/2134080924426702501

( ※ 上記URLから、PCは右クリック、スマホは長押しで、
別タブか別ウィンドウで作品画像を閲覧してください。)

今回「Atlessのアトラス」で書こうと久しぶりに調べてみると、
2012年にヴェルサイユ宮殿で展示していたことを知りました。
村上隆さんに続く、四人目として選ばれていました。

大活躍していますね〜。
またぜひ彼女の展示を見て、深いショックを味わいたいです。

 

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