消滅して価値を生む作品

 

海外旅行の目的の一つに、各国にある文化物を見ることが挙げられます。
パルテノン神殿、コロッセオ、ヴェルサイユ宮殿、などの建築や
ルーブル美術館、大英博物館、ニューヨーク近代美術館、などの美術館にある
コレクションの“実物”を見るのです。

これら“実物”は、現代まで残り続けたものだけしか見ることができません。

残り続けたものがあるということは、残り続けたもの以外は消滅したことになります。
消滅したものは、当然“実物”を見ることができません。

しかし、CGで作られた“恐竜”をTVや映画で見れるように、人類は僅かな記録や遺跡から、
古代に消滅した“実物”を“復元”する、素晴らしい叡智と技術を持っています。

“復元”されたものは“実物”ではありませんが、“復元”されたものは多くの価値を人びとにもたらします。

つまり、消滅したものにも、色んな価値を生み出す力があるのです。

現代アーティスト、宮永愛子さんは、消滅したものの価値を見出す作品を作り続けています。

宮永愛子さん
http://mizuma-art.co.jp/artist/0600/

( ※ 名前下URLから、PCは右クリック、スマホは長押しで、
別タブか別ウィンドウでリンク先を閲覧してください。)

宮永愛子さんは、ナフタリンで彫刻作品を制作しています。

ナフタリンで作られた彫刻作品は、どんどん昇華して、その形を失っていきます。
“急速に失われていく”からこそ、“消滅”するとはどういうことなのか、問いかけてくるのです。

石や木でできた彫刻作品であれば、その形を失うのは、はるか先か、鑑賞者の知らない所でしょう。

古代から現代にかけて繰り返された“消滅の歴史”を、宮永さんの作品は一展覧会で“早送り”で
再生しているのです。

アーティストにとって、歴史に作品を残すことは憧れです。
昔から、そして今でも、歴史に刻む一作を作るために世界中のアーティストは制作しているのです。

しかし、宮永さんの作品は、“歴史に残らない”作品を作ることで、鑑賞者に強烈な記憶と記録を
残し続けているのです。

永続的に歴史に残る作品も素晴らしいですが、残らないことが素晴らしい作品もあるのです。

 

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