絵画の歴史に“終わり”はあるか

 

新しい表現を求められる現代アートにおいて、絵画というメディアは今後も存続できるのでしょうか。

存続し続けるには、“メディアとしての独自性”が必要です。

確かに、時代とともに種類が増えていく表現メディアの中で、とうの昔にアーティストが
絵画というメディアを当たり前に選択する時代ではなくなりました。

しかし、たとえ絵画というメディアを選ぶアーティストが減ったとしても、
絵画には、“メディアとしての独自性”があるため、なくなりません。

絵画の独自性は、

「人が描いた痕跡を、絵肌とともに残せる」

です。

その効果は現状、他のメディアで代替不可能です。

たとえば、CGで「人が描いた痕跡」を表現できても、絵肌は残せません。

仮に技術が進化して、PC上のCGで人が描いた痕跡を感知し、
3Dプリンタで絵肌まで出力できるようになったとしても、
それは絵画による結果と同じため、絵画が存続していることと同義です。

ラジオが存続しているのと、絵画が存続しているのも本質は同じです。
ラジオは、音のみで情報発信している、という独自性があるから存続しているのです。
その独自性は、テレビやインターネットとは被っていないからです。

テレビには音も映像もあるから、ラジオはいらなくなるんじゃん、
と思うかも知れません。

しかし、視覚情報と聴覚情報が一体になっているテレビと、聴覚情報のみのラジオとでは
伝える情報の質と、情報を受け取るシチュエーションが異なります。
情報の質とシチュエーションに独自性があるため、なくなることはありえません。

同様に絵画が、動画など、他のメディアに埋もれてなくなることもありえません。
1枚を見せる絵画と、多数の画で一作を見せる動画とは、伝える情報の質とシチュエーションが
異なるからです。
絵画はどれだけの時間見るかは自由ですが、動画は視聴時間が存在します。

それぞれの表現メディアは、それぞれの独自性で異なる価値を持ちながら、
時代と社会の新しい要素や考え方を表現する受け皿として、存続していきます。

社会に色んな価値が生み出され続ける限り、
すなわち、人類が存続し続ける限り、絵画の歴史も終わらないのです。

 

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