現代アートの情報を得る上で、画集はかなり重要です。
展覧会で作品を鑑賞するのがベストですが、画集を見るとアーティストの表現の変遷や、
表現に至った背景を把握することができます。
展覧会は美術館やギャラリーなど“現地”で鑑賞となりますが、
画集は“家”などの、プライベートな空間でゆっくり鑑賞できるのもメリットです。
本物の作品ではなくても、画集ならいつでもどこでも見られます。
(過去エントリー: 本物の価値と、複製の価値 )
私の美大受験時代、活躍しているアーティストの“単体の画集”はありましたが、
“オムニバス”形式の画集がほとんどありませんでした。
あっても「ルネサンス期」「印象派」などの昔のばかりです。
私は、CDでいう『NOWシリーズ』のようなやつが欲しかったのです。
アーティスト単体の画集は、どうしても売れるものでなくては採算が取れないため、
“少し前までの売れている作家”が多く、画集売り場で見かけるラインナップは限られていたのです。
大きな書店の画集売り場(洋書コーナー)でもそんな状況だったため、美大受験生は、
ポール・ヴァンダーリッヒさん
アントニオ・ロペス・ガルシアさん
ホルスト・ヤンセンさん
などの特定の人気平面アーティストの画集を寄ってたかって見るわけです。
そしてみんな絵が被ります。
しかも、書店の洋書コーナーで色んな作家(画集)を見るには、横文字の分厚い画集を、
「一冊ずつ取り出しては、しまう」を繰り返して、見なくてはならなかったのです。
貴重でマイナーなアーティストの画集ほど、取り出しにくい場所に置いてあります。
ところが2000年前後から、素敵な“オムニバス画集”を見かけるようになりました。
私が欲しかった種類の画集です。
“オムニバス画集”が日本の洋書コーナーで見られるようになった原因は、
世界での現代アートの活発化、村上隆さんや奈良美智さんら日本人アーティストの活躍、
など複合的影響が書籍・書店業界にもあったのでしょう。
あるいは、日本人アーティストの活躍を目の当たりにした海外の出版社が、日本の書店に
目をつけたのかもしれません。
そんな“オムニバス画集”の中で、特に輝いた画集を出していたのが、
「Phaidon(ファイドン)」でした。
ファイドンはイギリスのロンドンにある出版社です。
美術史の入門書『The Story of Art』は現在世界で700万部以上発行されています。
私も何冊か持っていますよ。この『 Φ 』ロゴマークが特徴ですね。
どの画集も刺激に満ちています。
現代アート大好きな私は、一度に多くの作品が見られるため、
楽しくて仕方なくなります。
たまに、日本の展覧会で受賞している作品と酷似している作品を、これらの画集から
見かけたり、なんてこともあります。
私が持っているファイドンの画集『絵画の新しい視点』は
現代アートのペインティング作家を集めた画集です。
100名のアーティストが各評論家から推薦され、解説と合わせて掲載されています。非常にコンセプトがわかりやすい上、代表作がまとまっていてお得です。
日本人作家では、村上隆さん、奈良美智さん、杉戸洋さんの3名が推薦されていました。
ファイドンの画集は、六本木のTSUTAYAや、青山ブックセンター、恵比寿のNADIFFなどで取り扱いがあります。
こういった画集で、現代アートの世界状況を、足を運ばずともある程度
見られるようになった現在は、とても幸福な時代だと感じます。