アートは、お金をかければかけるほどクオリティがあがるものでしょうか。
つまり、「作品の質は制作費用に比例するかどうか」です。
同じモチーフの絵に廉価な絵の具と、高価な絵の具を使用した場合で考えます。
高価な絵の具で描かれた絵のほうが「素敵な作品」であり、「価値が高い作品」で
あれば、お金をかけた方が作品の質が上がるということです。
確かに絵の具の色を単色で比較した場合、高価とされるカドミウム系やコバルト系は
他の色より発色がよく、他の色は“沈んで”見えます。
しかし、カドミウム系を使って絵のモチーフの発色をよくすることで、
描くモチーフが素敵になるとは限りません。
沈んだ色を使った方が、モチーフの持つ歴史を深く表現できるかもしれません。
版画も同じです。
棟方志功が木版画ではなく、シルクスクリーンで制作していたら、あの“力強い彫りの軌跡”は
見ることができなかったでしょう。
このように、お金をかければ作品の質が上がるわけではありません。
しかし、注意点があることも忘れてはいけません。
お金をかければ作品の質が上がるわけではありませんが、
“お金をかけないと作品の質が上がらない” 場合も多いのです。
制作費用を出し惜しんで、
・大きなキャンバスがテーマと合っているのに、小さなキャンバスにする。
・テーマを深く表現するには多くの色彩が必要なのに、単色の絵の具しか使わない。
・繊細な筆のタッチが必要なのに、使い古しの毛が開いた筆を使う。
など枚挙にいとまがありません。
作品にお金をかける時、それは、“作品が必要としている時”です。
作品が必要としている、すなわち作品のテーマやモチーフにとって
最高の要素を入れるべく、お金をかけなくてはならないのです。
作品の最高の要素が何かをわかっていて、妥協したくないですね。