グローバル化を視覚化したアーティスト

 

グローバル化という言葉が聞かれるようになって久しいです。

グローバルとは「世界規模」ということですが、その影響を情報で理解する機会はあっても、実感する機会はほとんどありません。
そのため、「グローバル化が進んでいる」と言われても、そこまで納得感はありません。

街で外国人を見かけたからといって、「これが、グローバル化するということか!」
と納得したり驚いたりはしないでしょう。
街に出て外国人を何人か見かける位なら、明治時代だってあったでしょう。

グローバルという言葉は、世界“規模”と訳されていますが、視覚的な体験としては、
極めて部分的な事象にとどまります。
外国人を見かけたり、海外の商品やサービスを利用したり、など個々人での体験のため、
「世界規模」のような “量や広がり” を知覚的に実感する機会はそうないのです。

しかし、写真をもって、「グローバル化」を視覚的かつ直感的に理解できる作品が
あります。

アンドレアス・グルスキーさん:『 99 Cent』

アメリカ、ロスアンゼルスの99セントショップ(日本でいう100円均一)の店内を撮影した作品です。

大人の身長より少し高い棚に、びっしりと敷き詰められた99セントの品々。
99セントの商品が敷き詰められた棚は、広々とした店内に等間隔に配置されています。

見た瞬間、その商品の無限な広がり感じ、ゾッとします。

なぜ無限な広がりを感じ、ゾッとするのでしょうか。
それは、写真の構図に原因があります。

撮影カメラの視点は、だだっ広いフロアを構成する四方の壁の一つ。
壁の左右中心かつ、商品が入った棚の最上部と天井の中間の高さに視点があります。
その位置から、反対側の壁の中心点を「消失点」とする構図となっています。

「消失点」とは西洋のパースペクティブ(遠近法)の概念です。
視線の高さとなる水平線の1点に、視線と平行する全ての物体の線が集約します。

もともとパースペクティブとは遠近法というだけあって、近いものと遠くのものが
強調される構図となります。
近くのものは目の前にあり、遠くのものは遥か向こうにあります。

99セント商品が単にたくさんあるだけですと、
無限な広がりを感じることはなかったでしょう。

しかし、びっしりと敷き詰められた99セントの品々を、パースペクティブに
なぞって構図をとることで、遥か向こうまで商品が無限に広がるイメージが生まれるのです。

安く便利な雑貨や食品などの生活消費が、海外で大量に生産され、それが
国境を越えてあらゆる国に大量に行きわたっていく。
その様子が見事に視覚化されています。

この無限に広がる商品に、グローバル化の規模感とスピードを肌で感じ、
思わずゾッとしてしまうのです。

 

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