日本画の独自性

「日本画」と聞くと、古来より続く、日本独自の絵画表現という印象があります。
岩絵具や胡粉で描かれた、様々な色の粒子で織りなす繊細な画面作りが特徴です。

しかし、私は「日本画」が“古来より続く” という“印象”に違和感を感じています。

なぜなら、日本絵画の歴史を遡ると、江戸時代は葛飾北斎や歌川広重の「木版画」、
安土桃山時代は長谷川等伯の「紙本墨画」、室町時代は雪舟の「水墨画」、
といった具合に「岩絵具」以外の素材での傑作が多くあるからです。

岩絵具や胡粉による「日本画」は、“日本画の素材群の一角”ではないかと私は
思うわけです。
すなわち、「日本画」は特定の素材群で独自性を定義するのが難しいのです。

2014年3月7日現在の『Wikipedia』で「日本画」は、以下のように定義されています。

「狭義では、明治維新から第二次世界大戦終結までの77年間において、油彩に依らず、旧来の日本の伝統的な技法や様式の上に育てられた絵画を指す。これに対して、油絵は「洋画」と呼ばれていた。 」

結構あいまいですよね。

「旧来の日本の伝統的な技法や様式」って、どこからどこまでか、わかりません。
しかも明治維新とありますから、先ほど挙げました江戸時代以前を含んでいないのです。
しかも第二次世界大戦集結で終わってますよ!

となると…今の大学の専攻でいう日本画っていったい…。

このWikipediaの定義が正確かどうかはさておき、現在の時点で「日本画」を定義するのは
極めて難しそうです。

ある特定の素材群を日本画とできないなら、素材が影響する技法も特定できないのです。

では絵画表現の特徴で「日本画」を検討するとどうか。

絵画表現をテーマやモチーフ、コンセプトとした場合、「日本画」を特定できるか。

これも難しいです。
祭り、舞妓、富士山など、古くからの日本的なテーマやモチーフを描いたものを
「日本画」と呼んでしまうと、「支持体」や「素材」は何でもよいことになってしまいます。

そうなってくると、もはや「日本画」は、
日本で描かれた作品、という点しか独自化できないのです。

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