作品を制作し続けていると、“似た作品” が多くなってしまうことがあります。
その場合、「作品を大幅に変えたい」と思うようになるのですが、
「何を」「どこまで」変えるのか、を悩まれるアーティストも多いでしょう。
しかし、作品を変えたいと思っていても、制作活動の中で評価が高まってくると、
“それまでの良さ” を残すため、“少しずつ” 作品を変えることになるわけです。
その場合、鑑賞者がほとんど気付かない程度の、わずかな制作要素のみを変えていくことになります。
少しずつ作品を変える、とは、
・今まで使ったことのない色を使う(色の変更)
・アクリル絵具から油絵具に変える(画材の変更)
・ジェッソやモデリングペーストは使用せず、キャンバスの地に直接描く(テクスチャの変更)
上記のような変更です。
しかし、そもそも上記に挙げたような、作品内容を少しずつ変更する試みは、
あくまで「現状の自分の作品に別の要素が合うか確認する作業」にすぎません。
そのため、大規模な改修には至らず、アップデート(小さな改善、改修)に留まってしまいます。
作品のアップデートであれば、同じ作風で繰り返し枚数を描くこととあまり変わりません。
では、“何” を “どこまで” 変えれば、大幅に作品を変えられるのか。
それは、 “テーマを変える” ことです。
テーマを変えない限り、大幅に作品を変えることはできません。
なぜなら “テーマ” は、制作上のあらゆる工程の “最上流” にあるからです。
最上流にある「テーマ」を変えると、下流にある全ての制作工程を、見直さなくては
ならなくなります。
対象やモチーフ、構図、色、テクスチャ、タッチ、支持体など、全てです。
その見直しこそが、作風をアップグレード(大改修)する機会となるのです。
これはBtoCの企業が新商品を出すのと、全く同じです。
企業は新商品を出し、マーケットで「実験」を行うことで、また次の新商品が生まれれる。
実験により生まれた新商品は、マーケットでヒットする。
さらに、マーケットでヒットした新商品の製造工程では、旧商品の改善点が発見される。
旧商品のアップデート商品もヒットする。
すなわち旧商品(現状の作品パターン)だけを生産するだけでは、次なるヒット商品を生みだすことは厳しいのです。
ただし作品のテーマを変える場合、それまでに追求していたテーマの領域からどの位の距離があるかは、意識しなくてはいけません。
(過去エントリー:『アートの普遍3大テーマ』)
作品を大きく変えたいから、テーマを大きく変えたい、とも限りません。
また、自分がまったく知らない上にノウハウがないテーマ領域を扱うのも、
注意が必要です。
お菓子メーカーが薬を販売するということは、ほとんどないからです。
大きなテーマは動かさず、小さなテーマを変えてみる。
それが、作品を変える第一歩です。