モナ・リザは視覚体験できない

 

世界でもっとも有名な絵画として知られる『モナ・リザ』。

想像の余地をもたせる表情、幻想的な背景、緻密な描写とやわらかい描写のバランス、あらゆる絵画的要素が最上級のレベルです。

一般の人が見ても、専門家が見ても、「素敵な作品」と思えるのも、すごいことです。

10年ほど前、私はようやくルーブル美術館で『モナ・リザ』の “ホンモノ” を見ることができました。

しかし、がっかりしました。

実物を見た人は、みんな同じ想いではないでしょうか。

『モナ・リザ』の前面には5mほどの距離をあけて柵があり、柵の外からしか見ることができません。5mは結構遠いですよ。

その上、鑑賞者が柵の前にたくさんいるので、最初は柵よりさらに後ろからしか見られません。

しかも、額はガラス貼りになっていて、展示室の蛍光灯が反射して写りこんでいます。

細部なんてまったく見えません。おそらく下手な贋作と入れ替わっていても気づかないでしょう。

私は、一瞬で『モナ・リザ』の前を離れました。

3分もその場にいなかったと思います。

というか、あの小さな作品に対し、5m以上も離れると「見れていない」のと同じです。

その場にいる意味がないと判断しました。

『モナ・リザ』は、ウィキペディアで見た方が、細かい部分まで見れますね。

ウィキペディア:『 Mona Lisa 』

これが現実です。

結局、『モナ・リザ』は、先に挙げた鑑賞環境のため、“ホンモノ”としての “視覚体験” がほとんどできません。

それでも『モナ・リザ』は、見た人が「“ホンモノ” を見たよ」という “実績” を与え続けています。

その実績は、 “ホンモノ” だけが提供できる価値なのです。

そして、写真やインターネットなどの “複製” も、“ホンモノ” 以上の情報を提供できる価値を持っています。

過去エントリー、『本物の価値と、複製の価値』の最も顕著な実例です。

 

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