私は高校時代に美術予備校で、「効果」など考えず、ただ漠然とクロッキーを描いていました。
人物デッサンや、人物油彩、それらの本制作前にクロッキーを描くよう指導を受けたからです。
しかし、ある程度枚数を重ねると、
“絵画の制作スピードを上げるのに、かなり効果あるかも”
という考えにいたりました。
そして、受験までに3,000枚ほど描きました。
もはや修行ですね。
モチーフは、身の回りの日用品、石膏像(自前のラボルト)。
一番多く描いたのは、自分の “手” です。
そんなクロッキーざんまいの経験から得た、いくつかの効果をまとめてみます。
主な効果は、
・完成に向けて効果的なポイントが、わかるようになる
・タイムマネジメント能力が高まる
・柔らかい線、強弱の幅がある線、が引けるようになる
の3点です。
どれもすごく制作の支えになるのですが、
まず効果の中で一番重要なのは、
「完成に向けて効果的なポイントが、わかるようになる」です。
クロッキーは短い時間で仕上げる、短期決戦型のスケッチです。
15分、10分、5分、3分、1分など。
1分になると、もはや考える時間はありません。
手が自動で動いていないと、何を描いているか、わかるトコまで完成しません。
短時間で描ける線の本数は限られます。
その中で、どこに線を引けば “対象の特徴が表現できるか” が重要になります。
何度もクロッキーを繰り返すことで、 直観的にどこに線を引けば対象らしく見えるかがわかるようになります。
時間をかけるデッサン、油彩画においても、どこに手を入れると完成に近づくか、わかるようになってきます。
次に効果の中で重要なのは、
「タイムマネジメント能力が高まる」です。
過去のエントリーでも触れましたが、〆切を設定することにより
工夫する力は飛躍的に高まります。(過去エントリー:『〆切が作品におよぼすもの』)
クロッキーはその最たる例でしょう。1分ほどのわずかな時間で仕上げる形式は、クロッキーぐらいだからです。
何分までに~まで描く。あと何分で~の処理をほどこす。
など、枚数を重ねるほど計算ができるようになってきます。
最後に重要なものとして、
「柔らかい線、強弱の幅がある線、が引けるようになる」です。
一本の線を、長く、強弱をつけて描くのは難しいものです。
クロッキー経験が少ないうちは、直線による短い線を多く描き、全体が描けないうちに時間がきてしまいます。
しかし、短い時間で完成させるとなると、線の本数を減らして効果をだす必要にせまられます。
本数を減らして効果をだす。すなわち、1本の線でも効果をださなくてはいけません。
1本の線で効果をだすには、長い線で強弱をつけることです。
モチーフの輪郭を長い線で描き、強弱によりモチーフの遠近感や柔軟が表現できます。
様々な形のモチーフの輪郭に沿った長い線が描ける、ということは、やわらかい味のある線も描けるようになります。
以上が、クロッキーの主な効果として得られるものです。
やってみよう、をいう気分になって頂けるとうれしいです。
他には、スピーディに形がとれるようになる効果もありますね。
初心者には、良いことづくしです。