ディテールレベルの考え方

 

作品を完成させるには、どこまで細かく描くか検討が必要になります。
ここでは “ディテールレベル” と呼びます。

なぜディテールレベルの検討が必要か。

それは、作品によって最適なディテールレベルが異なるからです。

ディテールレベルを決めるのは、作品において “何を表現するか” です。
作家ごとに “何を表現するか” が異なるため、ディテールレベルも異なるのです。

ハイパーリアリズムのチャック・クロースさん、
新印象派のジョルジュ・スーラ、
抽象表現主義のマーク・ロスコ

3人とも、作品におけるディテールレベルが圧倒的に違います。

ハイパーリアリズムのチャック・クロースさんは、巨大なキャンバスに顔だけをいっぱいに配置します。
正面を向いたその顔は、毛穴までディテールを追いかけています。

新印象派のジョルジュスーラは、『グランド・ジャット島の日曜日の午後』が有名な作品です。
光の持つ色の複雑さを表現するために、多くの色幅による点描で描いています。

抽象表現主義のマーク・ロスコは、巨大なキャンバスに輪郭のにじんだ四角形を配置します。
画面上の要素は、1つから、多くて3つほどの四角形と背景のみです。
色も各要素に1色のため、1枚の作品に使われるのは数色です。
しかし、シンプルなカラーで輪郭のにじんだ四角形は、聖なる空間への入り口を暗示しているようで、鑑賞者は敬虔な感覚を持つことができます。

上記の3人のアーティストのディテールレベルは、明らかに異なります。
そして、3人の各作品のディテールレベルを入れ替えることもできません。

チャック・クロースさんの描写で、『グランド・ジャット島の日曜日の午後』を描かれたら、分解された光の響き合いを見ることはできないからです。

マーク・ロスコの作品も、輪郭がハッキリと描かれると、表現されていたものが失われてしまいます。

アーティストは作品を制作する際に、最適な表現を見つけ、その表現に合致したディテールレベルを検討しなくてはいけません。

ただ細かくしつこく描けば、良い作品ができるわけではない、というわけです。

 

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