アート番組であつかうべきもの

 

アート番組を見ていて、いつも考えることがあります。

それは、「なんでもっと建築作品をあつかわないんだろう」と。

建築作品こそ、テレビであつかわれるべきだからです。

なぜでしょうか。

テレビは、映像でものごとを伝達するメディアです。

そのため、映像で伝えるのに“向いているもの”、“向いていないもの”があるのです。

建築は、まさに映像で伝えるのに向いているものです。

もちろん、絵画や彫刻をアート番組であつかうのは良いことです。

しかし、向き不向きでいえば、“どちらでもない”でしょう。

絵画や彫刻作品が、映像の向き不向きと関係ないのは、“移動空間” がほとんど存在しないのが理由です。

建築は“移動空間” の宝庫です。そのため絵画や彫刻などと比べて、圧倒的に情報量が多いのです。

建築を見るための場所が無数に存在する、ということは、それだけの情報量を持っているということです。

建築の場合、見る時の天候や季節までもが作品に影響することになります。

そうした情報量を伝えるのに、まさに映像が向いている、といえるのです。

現状では、アート番組では「絵画」があつかわれることがほとんどです。

しかし、番組の大半は、アーティストの生い立ちを資料を用いて再現したり、アーティストの逸話を役者が演じてみる、といった “作品の周辺” に映像が用いられています。

作品そのものを(物撮りなどで)伝えると、時間がもたなくなり、アート番組が成り立たないのです。

しかし建築作品であれば、作品そのものを伝えるだけでも番組は成立します。

それだけ、建築作品が持つ情報量は多く、複雑だからです。

そして、映像であれば、建築内の移動空間を映像で表現することができます。建築内での鑑賞者の視点の動きや足取りを想定し、再現させることも可能です。

建築作品そのものを伝えようとするだけで、十分に魅力的な番組作りができるのです。

そして、天気や季節に影響される建物、建築素材や仕様によって室内に満ちた雰囲気。

そうした、言葉や写真では伝えきれないものを、映像であれば、伝えられるのです。

 

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