朝陽に夕陽、色とりどりの花、澄んだ空気に輝く星々…。
自然が生み出す美は、心を揺り動かす美しいものです。
“美” といえば、
『美術』という言葉は、“美” という漢字を持っています。
そのためか、“美” を表現するのが義務付けられているような感もあります。
自然の美を模したり、自然の美と比較されることもあります。
実際、アーティストの言葉で次のようなコメントを見かけることがあります。
「アートの美は、自然の美にはかなわない」
というものです。
要するに、“美” というものを一つの基準とし、それを “自然” の美と“アート” の美で比較しているわけです。
しかし、この比較は意味をなしません。
なぜなら、比較にならないからです。
モノゴトを比較するのであれば、比較の対象が同条件でなくてはいけません。
ところが、自然の美とアートの美は条件が異なります。
自然には、画面や部屋のような空間制限はなく、コンセプトなどもありません。
同じ条件で比較することは、不可能なのです。
そもそも、アートの中の “美” には、自然の “美” が含まれています。
たとえば、色彩の響き、色彩のグラデーション。
これらの要素は、自然の中にもアート作品の中にも存在し、“美” を感じられます。
また、自然空間と一体になっているアート作品もあります。
このように、共通の“美” が存在し、アート作品に自然が取り入れられる点でも、比較する意味はないのです。