金箔の扱いが難しい理由

 

 
金箔を画面に貼るのは難しい作業です。
箔を紙から取り外す作業から始まり、画面に接着していき仕上げるまで。
 
しかしそれも、画面に貼るまでの「金箔」を扱う難しさは、慣れることで容易にできるようになります。
 
 
問題は、貼った “後” の「金箔」が貼られた画面の “扱い” です。
 
「金箔」が貼られた画面があり、そこにモチーフを描く。
そうしてできた絵画に、“金箔を扱えていない” 状態が浮かび上がるのです。
 
「金箔」をうまく扱えていない絵画。
 
それは、描かれたモチーフが、“もの足りなく” 見えてしまうのです。
 
とにかく金箔を使用したい。という人によく見られる現象です。
カッコよく見える技法は、とにかくやってみたい意味ではよいことです。
 
 
ではなぜ「金箔」をうまく扱えていない絵画は、“もの足りなく” 見えるのでしょうか。
 
それは、「金箔」という質感が持つ緊張度に、描いたモチーフが “負けている” からです。
 
「金箔」という物質は、独自の粒子と輝きを持ちます。
また、一枚のサイズがある程度限定されているため、マス目状に詰めて貼られます。
 
独自の輝きと、マス目に詰められた状態。
これらは、何も描かれていなくても見ていられる、“質量” を持っています。
重押しで味のあるシワなどが入ると、さらに「金箔」そのものの魅力は高まります。
 
こうした魅力的な質感を、抑えて調和させる描写ができたとき、はじめて “金箔が扱えた” といえるのです。
 
 
「金箔」は、古来より日本の絵画で扱われ続けてきました。
 
豪快な構成で描かれた日本景色、豪華な花鳥風月。
 
こうした構成やモチーフのもたらす緊張度と「金箔」のもたらす質感の緊張度は、極めて近しくマッチしているのです。
生活に自然に「金」を取り入れていた時代だからこそ、画面上で緊張度をコントロールできていたのです。
 
「金箔」だけではなく、他のあらゆる強い “質感” を持つ素材は、扱いが難しいものです。
どうモチーフを構成し、どういう色や描写がマッチするか、描き出す前にチェックすることが重要です。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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