人類には、生息できる場所とできない場所があります。
土の中、砂の中、水の中…。
しかし、人類にとって過酷な場所で生息している生き物は多く存在します。
そして、特殊な環境下で暮らす生き物は、それぞれ特徴ある外見を持っています。
オケラやサソリ、熱帯魚。
人類という哺乳類の視点で “彼ら” を見ると、哺乳類とは違う “様々な特徴の外見” が魅力的です。
プニョプニョした軟らかそうな身体、全身反り返った甲殻、原色が対比するウロコ。
もし、人類が特殊な環境下で生命を紡ぐことができたらどうなるでしょうか。
いったい、どんな姿になるのでしょうか。
人類が「土」の中で進化し続けたら…。
人類が「砂」の中で進化し続けたら…。
人類が「水」の中で進化し続けたら…。
そんな、人類が生存できない場所で進化し続けた「人類像」を思わせる作品があります。
それが、加藤泉さんの描く「人物像」です。
加藤泉さんの描く人物像は、独自の進化を遂げた “人類像” のようです。
身体はシンプルな形状。
目鼻口などポイントとなる輪郭は、あたかも深海魚のように光っています。
皮膚は特徴のないフラットです。
これらは不気味で、人類から遠い、あたかも宇宙人のようです。
しかし、そのポーズや表情は、喜怒哀楽を感じさせる、人類の暖かみがあります。
そのため、鑑賞者はその「人類像」をほっておくことができず、“気になり続けてしまう” のです。
ついこの間まで、近くに暮らしていた同志のようにすら感じてしまいます。
そうした親近感を感じつつも、人類と異なる進化を遂げた「人類像」の “見た目” に鑑賞者は混乱し続けるのです。
加藤泉さんの作品は、その “人類像” を介し、鑑賞者に「ダイバーシティ時代の課題」を突きつけているのです。