ジェームズ・タレルさんは、光と空間を扱うアーティストです。
最近でいうとオラファー・エリアソンさんのほうが、“光” を扱うアーティストとして耳にする機会が多いのですが、タイプが異なります。
オラファー・エリアソンさんが「状況をつくる」アーティストなら、ジェームズ・タレルさんは、「状況をなくす」アーティストです。
ジェームズ・タレルさんは、鑑賞者の視界を覆う光の作品をつくることで、鑑賞者の状況そのものの意味を消しているのです。
人は視界を奪われると、危険に対処することが困難になるため、不安になります。
ジェームズ・タレルさんの作品は、室内空間に視界をちょうど覆うほどの光を設置し、鑑賞者は作品に目をやると視界を奪われます。
しかし、ジェームズ・タレルさんの作品は、“視界を奪われた” という感覚はありません。
なぜなら、煌々とする光が網膜に心地よい刺激をもたらす上、美しい色彩が感情を揺さぶるからです。
その輝く光の中に「呑み込まれたい」とすら感じてしまいす。
その空間の中で、身体的体験と感情体験という “両面” で作品を鑑賞できるのです。