スターを “人間化” させるアーティスト

 

有名人など、俗にいう “スター” 。
誰もが憧れる存在です。

人はスターについて、

「スターは違う」
「スターはオーラがある」

など、スターに対して、色んな想像を掻き立てるものです。
そして、有名人などのスターを “特別視” している側面があります。


しかし当然ながら、“スターも人間” です。
これは誰しも理解していながら、あまり意識しない事実です。

この、
“スターも人間” という事実を、ありありと表現する現代アーティストがいます。

それが、エリザベス・ペイトンさんです。


エリザベス・ペイトンさんは、人気のミュージシャンや俳優女優を油絵で描くアーティストです。
そのタッチは、あっさり描いているようで、描写に必要なポイントを押さえています。
色彩は少し彩度を落とした “暗め” の印象です。

何より特徴的なのは、描かれる “顔” です。
エリザベス・ペイトンさんの描く “スターの顔” は、虚ろで、表情がないのです。

つまり無表情ということです。


人が “スター” に思い描くイメージ。
それは、“星” とまではいかなくとも、“輝き” です。

“スター” は、歌も演技も言動も、私生活も輝いているはずなのです。

なのにエリザベス・ペイトンさんの描く “スター”は、無表情です。
それは、“輝いていないスター” なのです。


こうしてエリザベス・ペイトンさんは、輝いているはずの “人間(スター)” を、“普通の人間” として描いているわけです。
絵画の中で、“スター” という突出した存在は、“平板化” されています。


これは、アンディ・ウォーホルが、シルクスクリーンで著名人のイメージを “平板化” させたことに似ています。
アンディ・ウォーホルの場合は、“複製” により、“数の増加による価値の平板化”  を行いました。

エリザベス・ペイトンさんは、“有名人の表情の平均化” により、“価値の平板化” を行っているのです。


これは、強烈な “人間表現” といえます。
エリザベス・ペイトンさんが一般の人を同じように描いていたら、ここまで際立った “人間感” は出なかったでしょう。

“超有名人”という特別な人間の、人間的無表情(虚ろさ、憂鬱さ)を描くことで、“人間表現” が劇的に浮かび上がっているのです。

その達者な筆遣いのみならず、コンセプトも見事といわざるを得ません。


 



Comments are closed.