バンクシーというアーティスト

 

 
バンクシーというアーティストは、イギリスのロンドンを中心に活動しています。
バンクシーさんの作品は、道端の壁や塀などに描かれるため、「グラフィティアート」や「ストリートアート」に分類されています。
 
しかし、その作品内容は、『現代アート』です。
なぜなら、見る人に “何かを伝える” 要素が非常に強いからです。
 
そもそも、本来のストリートアートは、見る人に “伝える” アートではありません。
“描く人” 自身が「カッコいい」と思うものを具体化したものが、ストリートアートなのです。
 
ストリートアートを「カッコいい」と思う鑑賞者は、描かれた街の住人ではありません。
ストリートアートの描き手と同じバックボーンを持つ同世代の人が、「カッコいい」と共鳴するのです。
 
つまり、ストリートアートは、“街” に対してメッセージを発するよりも、“仲間” に対するメッセージが中心なのです。
 
 
そんなストリートアートに変革を起こしたのが、バンクシーです。
 
 
「風船の束を持って高く浮かんでいく少女」
 
「少女の持ち物を検査する軍人」
 
「買物カートを持ったまま転落する人」
 
「デモで火炎瓶でなく花束を投げようとする人」
 
「壁の裏に集めたゴミを隠そうとする人」
 
 
というような、 “日常であり得ない” モチーフが、街中の「壁」に描かれているのです。
 
人間社会の真面目さによる緊張を解きほぐすような、ユーモアがあります。
一方で、人間の喜劇で、街を歩く人に「平和」を伝えようとしているようでもあります。
 
こうしたバンクシーさんの作品は、その絵が描かれた壁を見る街の住人に、メッセージを送ります。
作品を見る人は、そのメッセージを受け取り、作品と深い関係を持つことになるのです。
 
 
日本でも、よく “街にアートを” といったスローガンで街中に作品を設置することがあります。
 
しかし、実際にどのくらいの人が、どのくらいの時間、それらの作品と “関係” しているのでしょうか。
そうした「関係性」を意識しているかも疑問が残る作品も、散見されます。
 
バンクシーさんの “一方通行でない” 作品の在り方は、鑑賞者に素敵な経験をもたらします。
鑑賞者だけでなく、美術関係者にとっても学ぶところの多いアーティストなのです。
 
 
 
 
 
 
 

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