絵が好きで描いているのなら、このお題の答えは明瞭です。
「描くために食う」です。
常に絵画のことを考え、意識している人間には「描く」ことは生きがいだからです。
にもかかわらず、制作活動を続けると、
「作品を認めてもらいたい」という思いが高まってくるのです。
もともと、絵画は人に何かを伝えるためのもの。
人に作品を見せ続けるなら、認められたいと思うのは自然な欲求です。
そうして、さらに真剣に打ち込み続けると、「アーティストを本職に」と考えるようになります。
短い人生、できるだけ好きなことに時間を使いたいので、これも自然です。
しかし、「アーティストを本職に」と考え出すと、作品が“売れ続ける”のが条件になります。
すでに売れている作家は“売れ続ける”ために制作し、
売れていない作家は“売れ続けそう”な作品を制作することになるのです。
どうですか?
一見、好きで描いてるんだから「描くために食う」が当たり前に思えるのですが、
実は多くの作家は「食うために描く」になる可能性をはらんでいるのです。
ヒロ・ヤマガタさんのように、本当にやりたいことをやるために、強い意志で
戦略的に活動できれば理想的です。
しかし、多くの作家は、自分のしたい表現と、売れる(評価される)表現のはざまで
苦闘することになります。
私は「食うために描く」は悪いことだとは思いません。
食えているのはすごい、と多くの作家に対して思います。
しかし、理想は「描くために食って、食えるから描く」ではないでしょうか。
売れることなど一切考えず、人に価値あるアートを提供する。
私は“売れる匂いが一切ない”作品には、圧倒的な純度があると考えています。
ポール・マッカーシーさんやマリーナ・アブラモヴィッチさんらの作品に
特別な感動がありるのは表現の純度が高いからです。
“売れるか”という意識を極力なくし、表現の純度を高めるべく制作活動したいものです。