現代絵画の条件 “視点の誘導” の効果

現代絵画において “必要と思われている” 、「視点の誘導」について検討します。

まず、なぜ重要視されるかです。

現代絵画は画面の構成要素が増え続けていて、“鑑賞者が共有する要素” の割合が減少しています。
「画面の構成要素が増える」とは、ほとんど何も描かれていないかに見える作品から、
画面中にびっしりと要素が詰まっている作品まで、無数の画面構成があるということです。

モチーフについても、人物もあれば細胞もあり、幾何学模様もあれば記号もある、といった状況です。

そんな中、数少ない、鑑賞者が共有する要素として、視点の動きがあるのです。
作品を「見る」以上、必ず視点が存在し、必ず視点は動くからです。

鑑賞者全員に共通する要素は、とても重要です。
「視点」という重要な要素を無視することは、公共の道路を自動車で逆走するようなもんです。

次に、「視点の誘導」とはどういったものか、です。

鑑賞者が、作品を鑑賞する時、視点の動きは以下となります。

(1)作品を見る(画面全体を認識する)
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(2)作品の気になるポイントを見る(画面内の特定箇所を見る)
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(3)次の気になるポイントを見る
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(4)(3)を繰り返す
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(5)視点の離脱(作品の外を見る)

上記が作品を鑑賞するということです。
そして、(4)が多い作品が、“見ごたえある作品” となるわけです。

となると当然、アーティストたちは(4)が多い作品を目指すのです。

作品内に視点を集めるポイント多く用意し、鑑賞者の視点をできるだけ長くとどめるようにします。
そのために、視点を集めるポイントに強弱をつけ、視点を順番に移動させようとします。
これが、「視点の誘導」です。

しかしここで、疑問が生じます。

本当に視点は誘導できるのか、と。

例えるなら、視点の誘導は「星座」です。
星というポイントがあり、それらを星座線でつなぎ、「星座」が浮き上がります。

しかし、いったい誰があの星座線の “結び順” を考えたのでしょうか。

私はあの星座線を見る度に思うのです。
「違う人が名付けていたら、『魚座』は『麒麟座』だったかも知れない」

星というポイントの位置は変わらなくても、それぞれの星を見る順序は、人により変わるはずだから、です。

つまり絵画でいうと、視点の誘導を自作に仕掛けても、思い通りには鑑賞者の視点は動かない。
ということです。

しかしながら、視点を重要視し、ポイントを仕掛けるところまでは非常に有効です。
それに、思い通りの順番に視点を移動させる必要もありません。
様々な星座を想い描ける、星々があれば良いのです。

眼は変わった部分に必ず反応してしまいます。
それをポイントとして配置することで、鑑賞者に長く作品を見てもらいましょう。

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