俯瞰、という武器

 
 
前回のエントリーでは、静物画を学習する重要性を書きました。
 
今回は、静物画で学べる要素の一つ、“俯瞰(ふかん)” について書いていきます。
 
そもそも“俯瞰(ふかん)” とは、鳥が上空から地上の景色を眺めるように、真上から全体を見る意味で使用します。
静物画で “俯瞰” を説明すると、台上に置かれた複数のモチーフ全てを、真上に近い位置から見ることです。
 
真上に近い位置からモチーフ全体を見ることで、モチーフそれぞれの距離が把握できます。
距離が把握できると、画面内の各モチーフで、強弱ポイントがわかります。
距離が近いポイントは強く描き、距離が遠いポイントほど弱めるのです。
 
また、俯瞰することで、画面内のモチーフの意外な姿が立ち現れることがあります。
たとえば、描く位置からは10cmほどの長さに見える縄が、俯瞰で確認すると実は50cmあった。
などというケースです。
長い筒が、穴を中心に見ると、長さがよくわからなくなるのと全く同じ現象です。
ボールや飲料用の缶なども、急な角度で回り込んでいるため、見た目以上の距離があります。
 
こうした、描く位置からの “見え方のギャップ” も俯瞰で確認できます。
 
 
“俯瞰”という見方は静物画のみならず、あらゆるモチーフで有効です。
 
静物は、適度なサイズで一箇所にまとめられています。
そのため、実際に静物モチーフの周囲を歩いて、位置関係をあらゆる角度や高さから把握することができます。
それに比べ、他の人物画や風景画では、大きさや規模の都合上、見れる角度や高さが限られます。
そのような場合も、限られた角度や高さから俯瞰のイメージで推測することで、正しい位置関係を描けるのです。
 
 
 
 
 
 
 

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