生命とイメージの繁殖

 

 
フェデリコ・エレーロさんの絵画は、小さな色面の単位と、小さな生き物のようなものが、一緒に描かれています。
 
色面はカラフルでポップです。生き物もキュートなキャラクターのようです。
 
 
◼︎ワタリウム美術館HP
 
 
しかし、作品をよく見ると、ポップな印象とは、別の何かが気になりはじめます。
 
気になっている原因…
それは、さっきまで可愛く見えていた、小さな色面と小さな生き物です。
1箇所から広がっていくように描かれた色面と生き物。
あたかも動いて増えていくのではないかと、鑑賞者を錯覚させるのです。
小さな色面も、数秒後には目が現れ、動き回りそうです。
 
鑑賞者に “ムズかゆさ” を感じさせ、鑑賞者自身の中に、イメージと生命体が増殖していきます。
その体験は、心地よいものではありません。
 
しかし、思い出します。
人間の体中は全て、「細胞」の集まりで生きているという事実を。
 
そして、生命というものが、生まれては消えていく、という儚いサイクルを想起させるのです。
 
 
人間一人が感じるライフサイクルは、とても長いものでしょう。
しかし、人間を細胞単位でみるならば、常に繁殖と消滅を繰り返しています。
 
さらに、人間そのものを、長い歴史で見れば、繁殖と消滅の繰り返しかもしれません。
フェデリコ・エレーロさんの絵画は、こうした生命の必然性を鑑賞者に突き付けているのです。
 
 
人類は進化し、情報の壁は薄くなり、どこへでも移動でき、あらゆる所に住めるようになりました。
 
そして、あらゆる国や人種が混ざり合い、繁殖と消滅を繰り返す。
フェデリコ・エレーロさんの絵画は、この世界のあり方も象徴しているのです。
 
 
 
 
 
 

Comments are closed.