アーティストは贅沢したらダメになる、は本当か

 

 
ギャラリストが座談会をしたある書籍で、次のような趣旨のことが語り合われていました。
 
「アーティストは作品が売れて、贅沢するようになったらダメだよね」
 
アーティストは、通常生活以上の収入を得ると、良い作品が作れなくなる。
お金があり、遊ぶ余裕を得ると、遊びにかまけて制作に専念しなくなる。ということですね。
 
 
しかし、本当にアーティストの “贅沢” は悪いことでしょうか。
 
作品が売れて、高いワインを飲むのは “贅沢” です。
ですが、コレクターとの会話が弾むかも知れません。
 
作品が売れて、海外の名所を旅するのは “贅沢” です。
ですが、世界の日常感を把握して、作品を差別化するプレゼン要素になるかも知れません。
 
 
現代アートで日本人のトップをいく村上隆さん。
その村上隆さんが、現代アート作品のコレクションを少なからず、保有していることはどうでしょうか。
 
これも、贅沢なことだといえます。
しかし現代アートの売買を自ら行うことで、販売ノウハウを手に入れ、審美眼まで高めています。
つまり、“贅沢” をすることで、より良い作品を生み出すシステムを構築しています。
 
 
そもそも、この “贅沢はダメ” 理論は、アーティストにだけハングリー精神を求めています。
 
贅沢が作品制作の質に影響するというなら、すべての仕事も同じことがいえるはずです。
ギャラリストという仕事もしかりです。
 
色んな巨匠の生涯の概要を知る機会はあります。
巨匠の中で、一時的な “贅沢” をする期間を過ごす巨匠はいます。
しかし、自堕落になり制作をやめ、崩壊していったアーティストの例は、ほとんど聞いたことがありません。
 
ポール・ゴーギャンはタヒチに旅立ち、より作品の独自性を高めました。
アンディー・ウォーホルは著名人との交流を活発にし、ポートレート作品を展開しました。
 
“贅沢” は、むしろアーティストが次のステップに進む、きっかけになるのです。
 
 
 
 
 
 

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