絵画に “見えない糸” をしかけよう

 

 
前回のエントリーでは、絵画に“緊張感” が必要であることを書きました。
具体的に、“緊張感” がある絵とはどのようなものでしょうか。
 
それは、“見えない糸” が張り詰めた絵画のことです。
 
では、“見えない糸” とは何か。
 
それは、絵画の複数の要素が画面に存在し、それらが “作用し合う状態” のことです。
要素同士が作用し合うことで、絵画上に “緊張感” が生じるのです。
 
この絵画上の要素同士の “作用”が、多ければ多いほど、絵画の “緊張感” は高まります。
また、要素同士の距離が開けば開くほど、同様に絵画の “緊張感” は高まります。
“見えない糸” が距離の分だけ、引っ張る力も増えるからです。
 
 
“見えない糸” は、意図しなくても、絵画の要素が存在する限り、生じます。
 
例えば、絵画の画面内に、二匹の鳥を描いたとします。
 
この二匹の鳥が画面の中央あたりに描かれている場合。
➡︎ 絵画に緩やかな “見えない糸” が生じます。
 
また、二匹の鳥が画面の左右両端に描かれている場合。
➡︎ 絵画に強く張りのある “見えない糸” が生じます。
 
 
先ほど、“見えない糸” は絵画の要素が存在する限り生じる、と書きました。
しかし、絵画の要素が埋まり尽くした状態があるのなら、それは “見えない糸” だらけである、と同時に、ほぼ何も要素が認識できないものになります。
 
つまり究極の “緊張状態” は、何も要素がない状態。
すなわち、下地の色の粒子のみで何も描かれていない状態、ともいえます。
 
 
しかし、絵画の目的が、究極の “緊張感”  を生み出すことでないのなら、制作者たちは、常に自分の絵画要素で “緊張感” を最大化することを意識するしかないのです。
 
 
 
 
 
 
 

Comments are closed.