制作の “テーマ” を検討する時のお手本

 

 
絵画や彫刻などのアート作品を制作するときに、検討しなくてはいけないのは “テーマ” や “モチーフ” です。
いざ制作するとなると、“テーマ” や “モチーフ” がなかなか思いつかない人もいるでしょう。
 
 
そもそも、アート作品を人が制作するのは理由があります。
 
① 描いたり、作るのが楽しい。という “制作への行動意欲”
② 人に “〜” を伝えたい。という “人への発信意欲”
 
上記のどちらかか、両方の理由で、人はアート作品を制作するのです。
 
 
① の「制作への行動意欲」はあっても、② の「人に何を伝えるか」がよくわからない、
という人は、アート作品で「何をどう伝えるか」を考えなくてはいけません。
 
 
そんなときに、非常にお手本になる作家がいます。
 
 
それは、ルイーズ・ブルジョアというアーティストです。
六本木ヒルズの広場にある、『MAMAN』という“巨大な蜘蛛の彫刻” を手がけたアーティストです。
 
この “巨大な蜘蛛の彫刻” が、なぜモチーフとして選ばれたのか。
その理由が、制作において 「何をどう伝えるか」のお手本になるのです。
 
 
ルイーズ・ブルジョアは、幼少期に父親の愛人(住み込みの家庭教師)と一緒に生活するという、尋常でない経験を持っています。
母親も一緒に生活していたわけですから、その苦しみは相当なはずです。
 
彼女の “巨大な蜘蛛の彫刻” は、そんな支配的な父親から家族を守り続けた “母親の象徴” なのです。
蜘蛛が餌をじっと待つ忍耐力などが、母親の姿と重なったということです。
 
蜘蛛の彫刻が10mほどの高さを持つほど巨大なのは、その経験が人生におよぼした影響の大きさに比例しているのかも知れません。
 
 
アート作品を手がける人は、世の中に幾多もいます。
誰もがルイーズ・ブルジョアのような “尋常でない経験” を積んでいる訳ではないでしょう。
 
しかし、彼女の作品のように、自身のもつ特別な経験をテーマにし、モチーフを “誰かの象徴にする” という考え方は、誰にでもできることです。
 
なぜなら、誰しもが “人生という経験” を持ち、誰しもが “影響を受けた人” を持っているからです。
 
ルイーズ・ブルジョアの作品は、制作で「何をどう伝えるか」に迷う人にとって、非常にお手本になる“ 考え方” を含んでいるのです。
 
「何を描こうか?」ではなく、
「どの経験を描こうか?」を切り口にするのです。
 
 
 
 
 
 
 
 

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